2012年6月7日

猫のデイジー

 さかのぼること12、3年くらい前。小学校低学年だったぼくの家に一匹の猫がやって来た。いや、やって来たというのはちょっと違う。正確に言えば母親が連れ帰って来た、というか、拾って来た。街の図書館の駐車場でみゃあみゃあ鳴いてるのをひょいと抱き上げて車に乗せて連れて帰って来たのだ。図書館の裏はまあまあ大きな公園になっていて野良猫がうようよしている場所だった。子供ながらに母親に「勝手に連れて来て、どこかで飼われてるやつだったらどうするの!」と訴えたが「あんな生まれたてみたいのが草むらで鳴いてたんだから飼い猫なわけないじゃん」と一蹴された。
 というわけで若干ロシアン・ブルーぽい青い眼の猫、デイジーが我が家にやってきた。ちなみにデイジーという名に反して男の子だった。どっちだかわからない頃に母親が「多分女の子だ」とデイジーと名付けたものの見事に外れた。性別が判明した後も彼はデイジーと呼ばれ続けた。
 
 我が家で飼われて来た歴代の猫の中でデイジーが一番人懐っこかったと思う。後にも先にもあんな犬みたいに懐いていた猫はデイジーくらいしかいない。ぼくが朝学校に行くとき、県道に出る手前のポイントまで見送りについてきてくれた。ここから県道で、道が大きくなる上に車の通りがぐっと多くなる、というところで彼は立ち止まって進まなくなる。ぼくがそこから先に歩いていくと、デイジーはぼくを見送って家の方に引き返していった。
 夕方学校から帰るときは、朝別れた地点にちゃんとデイジーがいる。今日はいないなあと思ったときも、ちょっと先に歩いていくと家の方から”迎えに”歩いて来るデイジーの姿が見えた。

 もう記憶が確かじゃないけれど、ほぼ毎日そんな具合だったと思う。本当に友人みたいな猫だった。ぼくが庭の椅子に座れば必ず膝に飛び乗って来てそこでリラックスして眠ってしまう。いつだか父親が雑誌の取材かなんか受けていたときにも、彼は父の膝に乗って寝ていて、後で出来上がった雑誌にその様子が写っていたので印象的だった。父もデイジーが一番良い子だったと言う。余計に手招きするまでもなく、一声呼んだらこっちに来てくれる。その後に飼った猫がみんな餌をあげるときにしか寄って来ない子たちだったことを考えると本当に良い猫だった。

 そうこうするうちに他所から別の猫が庭に迷い込んで来るようになると、デイジーは留守にすることが多くなった。そうしていつの間にか庭に帰って来なくなった。すうっといなくなった。

 また猫に送り迎えしてもらう生活したい。