2015年8月22日

「日本のいちばん長い日」感想


 クーデターを目論む陸軍将校たちの怒鳴り合いよりも、黙っているだけの役所広司と山崎努の表情の方がずっと迫力がある、くらいにこの二人の重厚さというか渋さというか、かっこいいというような簡単な言葉で表現したくないのだけれど、良い。本木雅弘の昭和天皇もしゃべり方や間の取り方はもちろん物憂げな表情がとても良くて、ラストの玉音放送も再現度が高かったと思う。
 松坂桃李が陸軍部の血気盛んな青年将校役だったが、若干血管がぶち切れないか心配になるほどの怪演だった。降伏に不満を持ち、玉音放送を阻止して戦争継続内閣を樹立させようとクーデターを企むわけだけれど、最初のうちは表情があったのが、事態が深刻化して後戻りできなくなるにつれて無表情となり、「戦争継続」ただそれだけを念頭に完全に作業の目になってしまっているのが恐ろしかった。
 国民全員を特攻させれば勝てるとか、最後のひとりになるまで徹底抗戦するとか、そんなことになったらそもそもの国が滅びるのはわかりきったことなのに、もはや誰もがなんのためにそんなことしているのかわからなくなり思考停止しているような様子が、あの怪演とも言うべき演技から伝わってくるようだった。それだけの狂気を感じさせることができるのはすごいことだと思う。
 特別出演で戸田恵梨香が出ていて、NHK放送局員としてちらっと活躍する。レトロな髪型が似合っていてとても可愛い。他にも松山ケンイチがカメオで出ていた。
 ところで皇居の侍従のひとたちの描き方はあんなんで良いのだろうかと思ってしまったり。けれど深刻な空気の中でのコミック・リリーフ的な役割だと思うし、コチコチになってしまっている軍部強硬派との対比とも言えるんじゃないかな。いずれにせよ玉音盤を一晩守り抜いたのはあのひとたちなので、彼らもまた重要な人々と言える。
 1967年の岡本喜八版も観たくなった。旧作の英語タイトルが直訳で「JAPAN'S LONGEST DAY」であるのに対し今作は「THE EMPEROR IN AUGUST」と、昭和天皇に重点が置かれているところも興味深い。原田監督のインタビューで旧作での天皇の扱いに不満だったことも言及されているので、旧作とは違うところに焦点を置いた作品となっているのだろう。旧作を観て比較してみたいと思う。