2016年4月28日

結婚指輪はドロイド




  ぼくの提案、というわけでもない。どちらから言うでもなく自然と決まった。「シスの復讐」ノベライズ版ではほとんど自分自身の所有物がない禁欲的なジェダイであるアナキンが、それでもパドメと結婚した際になにか贈り物がしたいと考え、自分が造った唯一の友人C-3POを彼女に贈った。R2-D2はもともとパドメが女王のときから王室の宇宙船に配属されていたので自然と彼女と行動をともにしていたが、それを機にパドメからアナキンに贈られ、ふたりはドロイドを交換したのだった。指輪の代わりと言える。ぼくはこの、映画では触れられない小説オリジナルのエピソードが中学のときから気に入っていて印象に残っていたので、いつだったか妻に話して聞かせたのだと思う。
 この刻印にぴったりだ。お互いの名前や恥ずかしい言葉を入れるよりずっと良い。"自分たちらしい"と言える。もちろんアナキンとパドメ夫妻の暗い未来については考えないものとするけれど。
 なんにせよ金の指輪にC-3POと彫られているのは我ながらかなり良い。ぼくは子供のころから3POが好きで、このドロイドの色とフォルムがぼくをSWに引き寄せたようなものなのだ。

台湾旅行記(2)




 お菓子の包装がとにかくどれも凝ったデザインで、憎いくらい可愛らしいものばかりだったのが印象的。お茶っ葉の缶も洒落たものばかり。植物や蝶をあしらった、派手だがくどくない鮮やかさはいかにも「フォルモサ(美しい島)」という名にふさわしい。
 ぼそぼそしたお菓子が多いのは湿度が高いからだろうか?アイスクリームのトッピング(むしろアイスクリームの方がトッピングでは?)には本当に驚いた。


 大人になるとある程度の味の好みが決まってしまって大人と特権として好きなものしか食べないというのがあるので、なかなか馴染みのない味に出会うことが少なくなってしまう(ぼくはわりとなんでも食べるほうだけれど)。しかし、国によってよく使う香辛料が違い、香辛料が違うということは料理も別物で、人々の味の好みだって全然違う。これだけ世界的にチェーン店が台頭していても、やっぱり外国というのは味やそれに対する考え方まで違うのだ。ひとは「知らない味」に出会うために外国に行くのかもしれない。それは子供の頃散々経験したと思いきや(大抵のひとは自分の家庭の味付けしか知らないものだから、実はそんなにたくさんの味付けを舌が覚えてはいないのではないかとも思うけれど)、大人になってもまだ未知の風味を味わえるのはとてもエキサイティングなことだと思う。
 書店で人々が床に座って静かに本を読んでいる光景を見たときは、自分の国ではそれが行儀の悪い行為だとされているにも関わらず、言い知れぬ安心感を覚えた。とても不思議な感覚だった。誰も互いのふるまいに目くじらを立てたりせず、そこにはただ本を読みたいひとにとって居心地の良い空気が満ちている。ぼくが本が好きなのに書店で一種の苦痛を覚えるのは、ずっと立ってなければならないというところ。あまりゆっくり本を選ぶ気になれないのだ。誠品書店ではどこか邪魔にならない端のところに座ってその本が自分の欲しいものかどうかゆっくり考えられる。
 こういったルーズでゆったりとした空気は、お店もお客さんも信頼しあっているからなんじゃないだろうか。信頼というのが大げさなら、「任せている」といった感じか。街を歩いていても感じたけれど、全体的になにに関しても「自己責任」という空気があって、だから皆自分で判断して行動しているように感じる。東京がそうじゃないっていうわけじゃないけれど、ぼくらのほうは少し余裕がないかもしれない。相互監視と言うとまた大げさだけれど、自分で考えて行動しているというよりは、許されていることしかしていないというか。外国からは自分の暮らしているところがよく見渡せるんだなということがわかる。

2016年4月27日

【営業報告】「スクープのたまご」発売


 装画と挿絵を担当した大崎梢さんの「スクープのたまご」(文藝春秋)が発売となりました。たまごらしい黄色いカバーがかわいい本になっています。


 カバーを広げるとこんな具合です。週刊誌を構成するあれやこれや、それが世の中を動かすいち要因となっている、というようなイメージをちりばめました。個人的には電車の中吊りが気に入っています。


 カバー下のイラストも描きました。実際に「週刊文春」編集部を見学させてもらったので、物語の舞台である週刊誌編集部の景色をモノトーンで。とにかく紙がたくさん、いたるところに積まれているのが印象的でした(当たり前だけれど)。


2016年4月25日

営業報告:SPUR映画レビュー第3回


 「SPUR」6月号の「銀幕リポート」では本年度アカデミー作品賞・脚本賞を受賞したトム・マッカーシー監督、マイケル・キートン主演「スポットライト 世紀のスクープ」(公開中)を取り上げました。
 マイケル・キートンとマーク・ラファロだけでなく、ジョン・スラッテリーやスタンリー・トゥッチも実はアメコミ映画の仲間で、彼らが実在する英雄的人物たちを演じているところに注目しています。

台湾旅行記(1)


 描こう描こうと思いつつも帰国してからなかなか落ち着かずにいたら、もう半年以上経っていた。「落ち着いたときに」と思っていても落ち着いたときって一体いつなんだ?ということに思い至りようやく着手したというわけなのだけれど、写真をいっぱい撮ったりメモをしたりしてあったので結構覚えていることもあり、作業をしながらいろいろ思い出してきてまた行きたくなっている。飛行機で外国に向かって飛んでいるんだという感覚、雲の上の光景、見知らぬ街に漂う知らない匂い。でも別に異世界に行っているわけではなく、自分が暮らしていたところから地続きの先にある、同じ世界なのだという感じは残っていて、初めての外国は大変過ごしやすかった。
 

 わかりやすく異国感が感じられてよかった。台北市内に上陸したときから知らない匂いというか空気感には衝撃を受けていたのだけれど、九份はひしめきあっている店から様々な匂いが漂ってきていて(匂う匂うとずいぶん失礼な話なんだけれど……)、そのどれにも馴染みがないから見知らぬ土地にいるのだなという実感があった。もう少し時間があれば何周でもまわってみたかったと思うくらい、どこかテーマパークの箱庭感も。帰りは皆いっぺんに帰ろうとするのでバスになかなか乗れず、客引きにわらわらと湧いてきたタクシーを使うことに。早く帰れたけれど最初に言われていた料金と少し違うし(聞き違いかもしれないけど。もう細かいところをよく覚えてないがなにか釈然としなかったのは覚えてる)そもそも観光客相手のガツガツした客引きに対してあまり良い印象がないので(向こうも仕事だから仕方ない)そこだけモヤっとした。まあでも他の国はもっとすごいんだろうなあ。法外な料金じゃなかっただけずっと親切である。
 続きはまた描き次第アップします。

2016年4月16日

営業報告:「GINZA」5月号美容特集イラスト


 「GINZA」5月号の「BEAUTY Q&A LESSON 」という特集ページにイラストカットを23点ほど描きました。いろいろな美容の質問や悩みにプロがこたえてくれる内容です。
 メイクのお手本図などは描いたことなかったので非常に興味深かったです。仕事をしながら知らなかったことを勉強できるのは楽しいですね。



 基本的に線画に一色ずつのさし色程度で、シンプルで気に入っています。どの部位に何色を使おうかというのを考えるのがなかなかおもしろい作業です。

営業報告:SPUR映画レビュー第2回


 「SPUR」4月号からはじまった「川原瑞丸の銀幕リポート」第2回はイアン・マッケランが引退した老シャーロック・ホームズに扮する、ビル・コンドン監督作「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」を取り上げました。引退間際のエレガントな老紳士ホームズ(肌がめちゃ綺麗)と、引退後フツーのおじいさんになっちゃったホームズの対比が切ないと同時に、ホームズを生きた人間として感じられる今までありそうでなかった作品です。

営業報告:「スクープのたまご」装画


 今月も装画のお仕事のお知らせです。大崎梢さんの新刊「スクープのたまご」(文藝春秋)の装画と挿絵を担当しました。
 日々世の中を揺り動かす週刊誌の編集部を舞台に、スクープがどうやって生まれるのか、記者たちの想いが描かれる物語。週刊誌の記事はどんな人々がどんな気持ちでつくっているのか、そんな疑問にこたえてくれる、今読みたい本だと思います。
 4月22日の発売です。




2016年4月9日

「寒い国から帰ってきたスパイ」感想


 ペルシャ猫を抱いた悪の首領率いる秘密結社ではなく、対立する外国を相手にした本物の諜報戦。主人公は本当に東側に寝返るつもりなのか、それともこれは作戦なのか、もしや作戦と見せかけて本当は亡命するつもりなのか……と本当に最後まで主人公の思惑や作戦の全容が見えず、真相がわからない。しかも結末はそれらの想定の範囲を大きく越えて、読者はあっと驚かされる。誰が騙し騙されているのか最後までわからないこの感じが、諜報とはどういうものかを表しているように感じられる。
 「ティンカー、テイラー〜」同様に主人公が冴えない中年のオヤジというのがまた良い。風采が上がらないだけではなく暮らしぶりも冴えない。タキシードでカジノに繰り出すなんてとんでもない、サイズの合わないトレンチコートでロンドンの大雨にやられてすぶ濡れになっちゃうんだから。その現実的な役人の風貌で遂行する任務とは、地道に書類を調べたりこそこそと飛行機に乗ったり尋問したりされたりという、本当にロンドンの曇天そのものみたいな仕事ばかり。昔「スパイキッズ」を観て夢中になっていたぼくに祖母は言ったっけ、「本当のスパイなんて嫌な仕事よ」と。祖母が本物のスパイ事情に通じているのかどうかはさておき、ジョン・ル・カレのスパイ小説はその祖母の言葉を裏付けるものだった。現実のスパイは地味でこそこそしていて、なにより堅実なのである。
 克明な描写がありありと光景を映し出してくれるところも読んでいて心地よいと思う。この時代のロンドンでの生活も垣間見えるし、東ドイツの様子なんかもどこまで忠実かは置いておいてもとても興味深い(作者はMI6に所属して西ドイツで活動していた経歴の持ち主なので、ハリウッド的な架空感とは全然違って、そこそこリアルな描き方なのではないかなと、ぼくは思う)。
 ところでどうして諜報員だったひとは小説を書くようになるのだろう?

2016年4月8日

小説版「シスの復讐」感想


 もうこの本を読んで10年経つらしい。「10年前」というのを振り返れる年齢になったのも感慨深いのだけれど、この本を読んで翻訳特有の文体に魅了されて(しかも謎な固有名詞がばんばん飛び交うSFもの)自分でも創作の真似事などをするようになったので、そういう意味ではひとつのきっかけになる読書体験だったと言える。とにかくひとつひとつの出来事や動作が、すぐにはイメージしづらいまわりくどさで描かれているところが「かっこいい」と思った。実に中学二年生らしい感想なんだけれど、でもあながち的外れな感想ではなかったんじゃないかなと思ったりもする。そこで感じた「かっこよさ」とは文章表現の幅のことだったのだから。起きたことをありのままに書く、それもいいのだけれど、ちがうことに例えてちょっと回り道して説明する。あんまりくどいのも考えものだけれど(くどさが作家性になっている方ももちろんいます)、それが文章による表現というものだったのだなあと。つまりこの本は、「『スター・ウォーズ』を読む」楽しさのほかに、「文章表現」について教えてくれたというわけ。
 実は当時、映画を観に行く前にこの本を読んでしまっていた。当然ノベライズ版のほうが描写が細く、映像では表現しきれない登場人物たちの思惑なども活字で描かれているので、ある意味映画よりもストーリーに関していろいろわかってしまう。そのため実際に映画を観たら物足りなさを感じてしまうという悲惨な結果が待っていた。一概には言えないけれど、ノベライズは映画を観たあとに読むに限ると思った(原作として小説がある映画はまた別だけれど)。映画にはなく小説にはある描写などは、映画を観た後に読むと補完されるところもあって楽しかろう。でも逆となると、小説にあったのに映画にはない描写ということになり結果的に物足りない気分になってしまうのだ。「あ、あれれ、あのシーンは無いの??」みたいな。ああ失敗失敗。
 昨年の「フォースの覚醒」はどうだったかというと、ノベライズの発売は映画公開よりずっと後になった。というかこの4月8日時点でまだ邦訳版は発売に至っていない。さすがに遅すぎませんか……。なので映画で少し説明の欠けていた部分が活字で補完できると思うと読むのが楽しみ。
 「シスの復讐」の物語はアナキン・スカイウォーカーの心の葛藤が軸になっている。この小説版もそれは同じで、ましてや「心の葛藤」を描くのに活字はもってこいなので、映画よりも一層アナキンの心がどのように揺れていたのかがよくわかる。葛藤していたのはアナキンだけではない。妻パドメ、師で親友のオビ=ワン、戦争を通じて姿を変えつつある共和国の未来を憂う人々(後の反乱軍の骨格となる人々だ)、ヨーダをはじめとするジェダイたち(彼らは長引く戦争で存在意義を見失いつつある)。銀河系が姿を変えようとしているときに、唯一苦悩していない人物がいるとすれば、すべての黒幕であるパルパティーン議長(後の皇帝)だろう。彼の邪悪な心理を伺い知れるのもまたこの本の魅力だと思う。

2016年4月6日

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015)感想


 あとから考えると正確には株の空売りをしたわけではないような……。細かいことは置いておいて、経済のことに興味が沸く。馴染みのないひとにとっては非常に難解な経済用語がばんばん飛び交うが、そのたびにいろいろとおもしろい説明の仕方をギミックとして用意してあって、「説明しよう!」と言わんばかりに有名人が突然出てきてユニークなたとえ話で解説してくれたりするので、飽きずに観ていられる。
 それにしても00年代半ばのアメリカというのはこんなに浮かれていたんだなあ。日本人である上に当時は世の中に対して関心がない子供だったので、なおさら映画で描かれる当時の様子が新鮮に思える。劇中、住宅ローン破綻の可能性について主人公たちから話題を振られた相手が「暗い話はやめろ」と言い返すのが印象的。世の中全体がそういうテンションで、調子が良いときにひとは都合の悪い現実を見ない、考えないものなのだということがよくわかる。そんな彼らが最終的にどんな目に遭うのかはあまりそこまではっきり描かれない(なんとなく示唆はあるのだけれど、ほんのちょっとの描写だからこそゾッとするところがある)。
 この映画は「大逆転」という邦題がついているけれど、スカッとするカタルシスがあるわけではなく、前半で主人公たちを嘲笑していた銀行や、低所得のひとにローンを組ませまくって儲けていたひと、浮かれ放題でその状況が永遠に続くと思い込んでいたひとたちが痛い目にあう、なんていうラストでは全然ない。それどころか主人公のひとりは「大逆転」の是非について苦悩さえする。最終的にもたらされるのは逆転によるカタルシスではなく、問題意識というわけ。ぼくなんかは難しいことはわからないので「お金儲けは大変だなあ」という感想が大きいのだけれど。

2016年4月1日

営業報告:ディスクユニオン「集めたくなる栞」


 ブックユニオン各店で書籍・雑誌を1000円以上買うと一枚もらえる「集めたくなる栞」。一年の間、毎月イラストレーターが描き下ろした絵柄等で展開される企画ですが、この4月から参加させていただくことになりました。ぼくは毎月「本のジャンル」をテーマに描かせていただきます。初回は「ミステリー」(左から2番目参照)。毎月数量限定となっております。今後もお楽しみに!