2016年6月5日

『エイリアン』(1979) 感想


 意外にも猫映画である。猫が一切ひどい目に合わない、それでいて最初から最後まで目立つところに居座っているのだ。脅威に晒され、宇宙船を爆破して脱出しようという間際でもシガニー・ウィーバーは片手に火炎放射器、片手に猫を入れたケースを持って大急ぎだし、情け容赦なく人間を殺し続ける生態系の頂点であるエイリアンも、猫には手を出さなかった。恐怖の前触れとして動物を無残に死なせてしまう映画とは大違いである。痛い目にあうのは人間だけに限る。
 エイリアンや宇宙船などのデザインも印象的。夢のあるSFとは言い難い描写ばかりで、雑多で薄汚れた機械ばかり出てくるのだが、だからこそ存在感や説得力があるし、装置を操作するシーンなどは細かく描写されているのも実際的に感じる。たとえば『スター・ウォーズ』シリーズでは意外にも宇宙船や機械の操作のシーンというのが全然映らないんだよね。手元がアップになったりすることがあまりないので、一体どういう手順でどういう操作をしているのかがわからず(別に手元が映ったとしてもわかりゃしないのだが)そのあたりは薄っぺらいファンタジーに見えてしまう。たまに操作している手元が映ったかと思えば、ひとつの同じボタンをぽちっと押すだけで通信機が動いたり地図が現れたりとわりと適当なのだ。エイリアンが倒せないと悟ったシガニーが母船を爆破しようと時限爆弾の操作をする描写なんかは、どのボタンがなんなのかはわからないのに、操作の手順がなんとなく伝わってくるし、爆破を中止しようとしたときにはその操作の逆をやらなければならないので「さっきやったことをまた元に戻すのか!」と観ているこちらにその大変さがよくわかるというものだ。謎の記号が書き込まれた不思議なキーボードもガジェットとして魅力的だった。
 子供の頃は『午後のロードショー』なんかでやっていた『スペースボール』('87)を繰り返し観ていたせいか『エイリアン』はやはり「腹がグロいことになる」というイメージが強く、『エイリアン』と言えばさきに『スペースボール』を連想してしまいがちだったのだが、ダーク・ヘルメット(ダース・ヴェイダーに相当するパロディキャラ)役のリック・モラニスはその3年前の『ゴーストバスターズ』('84)でシガニーと共演(番いのガーゴイルに揃って憑依される)しているので、まあぼくの連想もあながち見当違いではあるまい。エイリアンを独りで倒す航海士と偽ダース・ヴェイダーの組み合わせを久しぶりに観たくなった。今年公開の新『ゴーストバスターズ』ではシガニーがカメオ出演するという話もあるので楽しみ(しかも旧作でバスターズの秘書役だったアニー・ポッツもカメオするらしいのだから待ちきれない。ぼくが「眼鏡の秘書」に興奮を覚えちゃうタイプなんだけれど、多分彼女のせいなんだな)。
 『エイリアン』を観た直後、アマゾン・プライム・ビデオで『スペースボール』を久しぶりに観たのだけれど、リック・モラニスは機材や合成一切なしの地声でダース・ヴェイダー・ヴォイスを再現しているんだよなあ。ものまね芸人のこういうところが非常にかっこいい。つかなんで『スペースボール』の話になってるんだよ。