2016年6月9日

『デッドプール』(2016)感想


 あまりにも台詞に含まれるネタが膨大すぎて、『X-MEN』シリーズはもちろんその他アメコミ映画、SF映画、音楽などサブカルについて一定の知識がないとよくわからないのではないか、このあたりの台詞の可笑しさがわからないとただ妙なテンションで無茶なアクションを繰り返す危ないやつ程度にしか見えないのではないかという心配もある。もちろんそれで満足できちゃうひとはいいのだが。このキャラクターは「よくしゃべる」ことが魅力のひとつなので、その台詞によく耳を傾ける(あるいは字幕を注視)のも醍醐味である。
 メタギャグ担当として自分がいる世界を観客と同じ立場で俯瞰しているその性質のためか、他の既存キャラクターのグッズが大好きだという個性も際立っている(登場人物でありながら「いちファン」であるという可笑しさ)。宣伝されていたようにキティちゃんグッズもそうだし、個人的には赤い戦闘スーツの袖をまくると現れた『アドベンチャー・タイム』のかわいい腕時計がとても気になったりした。部屋にたくさんアドベント・カレンダーが飾ってあったことからもそのコレクターでもあるだろう。どういうグッズが登場したか細かくチェックするのも楽しそう。
 で、そういう遊び心満載、ギャグ満載、少々クドい皮肉や揶揄がたくさんという感じでありながら、意外にもしっかりとストーリーが一本通っていて、非常にハートフルであるところも、このキャラクターをただフザケまくるやつに留めていない。運命の女性との出会い、幸せな新婚生活(ずっとアレなプレイのシーンだったような)、癌の宣告、病に寄り添ってくれようとする妻、その妻のために立ち去ろうとという決意、そうして治療のために「実験体」となって超人に……。不死身の代償は醜く焼けただれた顔で、戦う動機はその顔を元に戻して彼女のもとに戻るため。顔は元に戻るのか、変わってしまった彼を彼女は受け入れてくれるのかという、繊細な愛の物語が軸になっているのだ。おフザケと、そのストーリーとのバランスがよく取れているし、綺麗におさまっていたと思う。なんだかんだいって、ちゃんとヒーローしていたし。
 MCU側の『アントマン』(’15)とその仕上がりや立ち位置が似ているのではないだろうか。ただ、同じ「小規模な外伝」でありながら向こうのほうが世界観の広がりをより感じられたような気がする(もちろん『アベンジャーズ』を主軸にした、もう8年も続いている大掛かりなクロスオーバー・シリーズなのだから力の入り方や周到さが違うと思うけれど)。『X-MEN』シリーズを揶揄する台詞や、多岐に渡る話題があったものの、結局は「観客と同じ目線で俯瞰している」ことでしかないので、あまり世界観の広がりは感じられないのだ。まあ、デッドプールの場合は仕方ないよなあ。
 ちなみにデッドプールは『スター・ウォーズ』オリジナル三部作のファンで、プリクエル三部作否定派。彼の前で『ファントム・メナス』を褒めようものならその場で処刑されるらしい。そんな脅しには屈しないぞぼくは!