2016/10/29

SPUR映画レビュー第9回


 遅くなりましたが、SPUR最新号ではスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレ原作、スザンナ・ホワイト監督、ユアン・マクレガー主演の『我らが背きし者』を紹介しています。
 ル・カレ作品は薄暗い部屋で書類を調べたり尋問したりというイメージが強いですが、本作はジェームズ・ボンド並みに国境を跨いで動き続ける逃避行ものです。ユアン・マクレガーが安定的なのに対して共演のステラン・スカルスガルドのアクの強さが効いています。ル・カレ原作といえばアマゾン・プライムのオリジナル・ドラマ「ナイトマネジャー」もおもしろかった。トム・ヒドルストン主演でゴージャス感が強く、オープニング・ロールのヴィジュアル・センスも007的。トムヒは次期ボンドとしても名前が上がっているけれど、もうこれをトムヒ版007としちゃってもいいくらい。いろいろな側面があってル・カレの世界は奥深い。

前号では児童文学のレジェンド、ロアルド・ダール原作、スピルバーグ監督、マーク・ライアンス主演のファンタジー、『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』を取り上げました。ダールの本といえばチョコレート工場のやつくらいしか読んだことないのだけれど、観ていて、ああ、ダールっぽいなと感じられちゃうのが不思議。本作は字幕もダール小説の邦訳感が出ているので、原作ファンは楽しめるのでは。バートンの『チャーリーとチョコレート工場』にもあの独特の、シャレの効いた字幕欲しかったなあ。
 あと、これを観てつくづく思ったのは、アメリカ人が描くロンドンは本当に可愛らしいなということ。外からの目は大事だね。
 ぼくがドラマ「ダウントン・アビー」でいちばん美人だなと思ってるペネロープ・ウィルトンが英国女王役で、そのまわりを例によってコーギー犬が駆け回っている様子は大変微笑ましい。

 前々号ではサミュエル・ベンシェトリ監督の『アスファルト』について描きました。フランスの団地もので、どんより曇り空の下団地に暮らす人々を描く。外からの灰色の色彩に対して登場人物たちそれぞれの個性の色彩が際立っている印象。イザベル・ユペールかわいい。