2017/04/09

『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017)感想


 実はジョーカーよりもトゥーフェイスが好きである。初めてこのキャラクターを認識したのは『バットマン フォーエヴァー』('95)でトミー・リー・ジョーンズがハイテンションで演じているのを観たとき。その後改めてティム・バートンによる第1作('89)にもまだ顔が無傷な正義の検事ハーヴェイ・デントとして登場していることを知った。『スター・ウォーズ』シリーズの我らが男爵でおなじみビリー・ディー・ウィリアムズが演じているところも興味を惹かれた。子供の頃は、別々の映画で同じ俳優が出ていることに気づくと、ものすごい大発見をしたような気分になったものだ。

 トゥーフェイスは堕ちた怪人である。元々は善人だった、というところがいちばんの魅力ではないだろうか。正義を追求するあまり、正義に裏切られ、物事の二面性に取り憑かれて、コイントス無しにはなにひとつ決断できなくなってしまう哀れな男。とあるコミックでの描写が興味深かった。アーカム精神病院に収監されていた際に、治療の一環として医師から彼の行動の全てを決定する唯一の道具、コインを取り上げられ、代わりにトランプのカードを数枚渡されて選択肢を2つ以上に増やされてしまうのだが、選択肢が「多すぎ」たためにトイレに行くかどうかもなかなか決められず失禁してしまうというくだりがあった。改めて彼がいかに「2」という数字に支配されているか、またそれに依存しているかがわかる。もはや彼はそれなしには生きられない。

 顔や身体が左右で全く異なるというヴィジュアルの魅力についてはもはや語る必要はないだろう。そんなものは見りゃわかる。今回のレゴムービーでは、左側は完全に映画作品で最初に登場したビリー・ディーのハーヴェイ・デントで、声も本人が当てている。右側はどうだろうか。派手なマゼンタ色はトミー・リー・ジョーンズが『フォーエヴァー』で演じたスタイルを思い出させるし、顔が骸骨になってしまっているところはアーロン・エッカートが『ダークナイト』('08)で扮したヴィジュアルを意識しているように見える。そしてダメージの感じが今までの実写映画やアニメ作品で描かれたような火傷とは異なり、溶けている感じに近いのは、レゴ人形がプラスチック製だからだろうね。おもしろい。
 そういうわけでトゥーフェイスというキャラだけ見ても、そこにはこれまでの映画版全ての要素が取り入れられた上で、デフォルメによって再解釈され、そのキャラクターが持つ元々の魅力を最大限に表現されている。それは作品全体に行き渡っているので、もし特にお気に入りの作品やキャラがいるひとは、そこに注目したらきっと楽しいはず。
 原作コミックはもちろん繰り返される映画化、アニメ、ビデオゲームによって本当に様々なスタイルを持ち、絶えず更新され続けているアイコン的キャラだからこそ、ここで今一度バットマンとはどういうものか、というのをシンプルに教えてくれる。