2017年9月9日

『ダンケルク』(2017)


 1940年、ドイツ軍の侵攻によりフランス本土最北端のダンケルクに追い詰められたイギリス海外派遣軍。ドーバー海峡のすぐ向こうは祖国イギリスだが、ドイツ軍はすでに彼らを包囲していた。貨物船や漁船、遊覧船、救命艇、タグボート、水に浮くあらゆる船舶が緊急徴用されて兵士たちの救出へ向かったというこのダンケルク大撤退を、なんとか船に乗り込んで国に帰ろうとする若い兵士や、地上の部隊に襲いかかるドイツ軍爆撃機と戦う空軍パイロット、自らの意志でダンケルクに向かおうとする民間遊覧船の船長など、陸、海、空に視点を分けて、それぞれで戦いと脱出に挑む人々を描いた群像劇。
 イギリス軍のお鍋型のヘルメット、ブロディ・ヘルメットはいっぱいいるとより良いな。現実の戦闘機にそれほど興味はなかったのだけれど、本作を観ればイギリス空軍のスピットファイアが好きになること間違いなし。劇中のマーク・ライランスでなくともべた褒めしたくなるロールスロイス社製のエンジン(エンジンが停まっても飛び続けられるなんて知らなかったよ)、手に汗握る正真正銘のドッグファイト。空だけでなく、海も陸も、全てにおいて細かい描写があって、全部に焦点が合ってるかのようなノーラン作品の鮮明さが「イギリスの物」特有の独特のディティールと合わさって、まあ、とにかく没入しちゃう。没入するということは、それだけ悲惨なシーンに胸が痛くなるのだけれど、民間の小さな船が大挙して押し寄せて、イギリス軍が撤退に成功し、兵士たちが本国で予想外の熱い歓迎を受けるところでは劇中と同じ喜びを感じることもできる。チャーチルの有名な演説もやっぱり良い。帰還した兵士たちにトーストや紅茶が振舞われるところも、ぼくの好きなイギリス的温かさ。おうち感とでもいうのかな。ノーランは戦争映画も上品。