2017/10/14

『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)



そうそう、思えばスパイダーマン対バットマンなんだよね。で、マイケル・キートン自身もバットマン、バードマンに続きまたしても翼のある役。まあいずれもバットマンを演じたことに起因しているような気もするが。キートンの悪役は、本作と同じくこの夏に公開された『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』や2014年のリブート版『ロボコップ』でもそうだったけれど、そのひとなりの信念につき動かされているというか、単に悪いやつとして片付けられないなにかがあるよね。

 ピーターの部屋に飾ってあったSWグッズは棚の上の3.75インチ・フィギュアだけではない。このスケールのフィギュアが乗れるXウィングが吊るされていたりするのも、ナード男子の部屋に素敵さを出している。このXウィングは見た感じオールド・ケナーのものだと思う。

 ケナーというのはSW第一作目公開時からSW商品をつくっていた会社。映画の関連商品、ましてや玩具を出すなんてそこまで定番じゃなかった時代に、今日まで続くSWトイの礎を築いた元祖中の元祖。今では数多ある、ディズニーへのライセンス移行以降は毎秒増え続けているかのように感じられるSWグッズ、その全ての元祖がケナーなのだ。

 最初に出されたフィギュアのつくりは非常に素朴で、可動箇所は首と両肩、両脚の5箇所だけ、ポーズは気をつけの姿勢というシンプルなもの。大きさはそのときから3.75インチでそれは今も変わっていない。1977年のEP4公開に合わせて販売する予定が生産が遅れたので、その年のクリスマスには引き換え券を売るという手法を使ったのは有名な話。なのでEP4に合わせて登場したフィギュアには公開から一年後の「1978」という製造年が刻印されている。ちなみにこのときの日本の代理店はタカラ、続編のEP5からはポピー(現バンダイ)となる。今ではそのバンダイが自社でものすごいクオリティのSWフィギュアやプラモを出していることを思うと感慨深い。
 これら旧三部作時代に出されたものは、のちにケナーのブランドがハズブロに吸収されることもあり、後年のものと区別してオールド・ケナー(あるいはヴィンテージ・ケナー)と呼ばれる。今の水準からすれば粗悪なところもあるかもしれないが、そのレトロさに魅了されているファンは多い。ぼくも何体か集めたし、ピーター・パーカーもまたそのひとりだろう。日本よりアメリカ本国のほうが入手は容易らしい印象がある。インスタグラムとか見てると結構みんな持ってる。状態にこだわれば(未開封とか)もちろん値段も高くなるが、ぼくは開封済みで色剥げはもちろん付属品もないようなものを1000円くらいで買う程度。ちなみに発売当時の定価は380円くらいだったとか。

 その後ケナーは会社が傾いてハズブロ傘下に(正確には87年にケナーがトンカ傘下になり、そのあとトンカ自体がハズブロに買収された)。SW旧三部作が一旦終了した頃だということを考えると、いかにSWトイが稼ぎ頭だったかと想像がつく。
 95年にはハズブロがケナーのブランドで再び名物ラインの3.75インチフィギュアを展開。97年の特別篇公開に向けて登場したそのシリーズは、その頃のアメトイの流行りなのか、とにかく逆三角形のマッチョ体型なので、遠目にもそのシルエットがわかりやすい。顔の再現度もとても低いので、特にレイア姫なんかマッチョで顔がごつくて、さすがにキャリー・フィッシャー怒るだろという感じである。ピーターの部屋に飾ってあったものだと、左から三番目のストームトルーパーや、一番右端のパイロットがそれっぽい形に見えるがどうだろうか。
 ぼくが幼少の頃初めて買ってもらったのもこの頃のシリーズだった。同世代のひとはやはり、緑色や赤色のライトセイバーとダース・ヴェイダーの顔がプリントされたブリスター・パッケージの台紙は懐かしいはず。
 この頃はまだ一応ハズブロがケナーというブランドを保持していたので、パッケージにもケナーのロゴが入っていたりする。そのためこのシリーズのこともオールド・ケナーと呼ばれることがあるが、それは間違い。あくまでオールドやヴィンテージと呼ばれるのは旧三部作公開時代、ケナーが独立して出していた頃のものだ。

 特別篇やEP1の公開を経て、ケナーのオフィスは閉鎖され、完全にハズブロに吸収される。以後、ハズブロは最新作『最後のジェダイ』に至るまで3.75インチ・フィギュアはもちろん、それが乗り込めるサイズの乗り物などたくさんのSWトイを生み続けてきた。時折ケナーのロゴをつけた復刻パッケージとかも出していたが、そういったヴィンテージ・シリーズが来年また再始動するという話もあるから楽しみである。

 ちなみに3.75インチという半端な数字はどこから来たのか。当初ルーカス・フィルムは当時定番だった8インチくらいのフィギュアをケナーに希望していたが、ケナー側はSWに登場する宇宙船やスピーダーなどの乗り物に可能性を見出し、フィギュアもそれらの玩具に乗せられる大きさにしようと考える。そこでどれくらいの大きさだったら乗り物もそこまで大きくせず遊びやすいサイズにできるか検討している最中、ある社員が「これくらいでどうだ」と親指と人差し指の距離でもって示したところ、もうひとりがそこを測ったら「3.75インチ」だったという逸話がある。こうしてこの非常に半端な数字は今日に至るまでSWのみならずあらゆるフィギュアにおいて定番スケールのひとつとなった。もちろんスパイダーマンをはじめマーベルのフィギュア・シリーズにもこのスケールはある。

 最後になんとかスパイダーマンに戻ってこれた。でもここで思い出したから書き加えておくと、『E.T』にもオールド・ケナーのSWフィギュアがいくつか登場し、主人公エリオットが「カルリジアン、ボバ・フェット、ハンマーヘッド」などとキャラクター名まで言いながら遊ぶシーンがある。『ホームカミング』よりもちゃんとフォーカスされるので、気になる方は見返してみよう。